trio toucher(トリオ・トゥシェ)


中学・高校・大学と通して同窓の友人である歌手の前川礼美(ひろみ)さんのコンサートに行ってきました。彼女は、歌とピアノとギターという編成のトリオ・トゥシェというグループを組んで、百人一首の句にメロディをつけて音楽で演奏するというステージを行なっています。普段はヨーロッパを拠点に活動しており、今回初めて日本で公演するとのことでした。(今回は演奏者のご都合で歌とピアノの2名による演奏でした)


着物ともドレスとも取れるような白の衣装で現れた礼美さん。句を詠んだ人物はどのような出自で、どのような状況でどのような思いを持って詠んだのか…ステージ中央に置かれた障子の裏で、台詞仕立てで句の背景を語ります。ピアニストによって句が朗読されたあと、前に出てきた礼美さんが、ピアノ伴奏と共に曲になったその句を歌います。三十一文字の短歌につけられた歌ですからどの曲も長さは1〜2分程度、フランス歌曲のような響きに、ときに日本の民謡のような節回しもあり、ときにフレンチポップスやジャズのようなテイストもあり、耳に優しいけれどユニークです。ピアノの伴奏も繊細でとても美しい。語りと歌の演じ分けやちょっとした立ち居振る舞いに、礼美さんの表現力の幅広さを感じます。また、曲によっては能面や扇を手にしたり、フィンガーシンバルを鳴らしたり、お三味線が入ったり、というちょっとした演出があって、それが実に効果的です。


曲想が、私がその句に抱いていたイメージとぴったりのものだったり、全く違うものだったり、それがまた興味深い。海外公演では、観客の方々はどんな印象を持つのでしょうか、気になります。


この日演奏されたのは20句弱で、ひとつひとつの句に添えられた語りと音楽がそれぞれの味わいを持っていながら、全体は一つの世界観でまとめられ、ひとつのお芝居を見ているような充実した時間でした。


家に帰ってから、百人一首をあらためて読み直しています。

トリオ・トゥシェの方々は10年という歳月をかけて、この作品をまとめたそうです。一つのものを時間をかけて精製してゆくということの貴重さを感じたステージでした。


受付でチケットとして渡された百人一首のクッキー。私のは蝉丸の札でした!